2013年11月11日月曜日

『父の唯一の我侭』



就職活動で大変だった大学三年のある日、お父さんから唐突に沖縄旅行に誘われたのですが、「今は大事な時期だから」と断ってしまいます。が、その事を後日に後悔することに…。


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「沖縄に行かないか?」

いきなり父が電話で聞いてきました。



当時、大学三年生で就活で大変な頃でした。
「忙しいから駄目」と言ったのですが父はなかなか諦めません。



「どうしても駄目なのか?」

「今大事な時期だから。就職決まったらね」

「そうか・・・」



父は残念そうに電話を切りました。急になんだろうと思ったが気にしませんでした。







それから半年後に父が死にました。癌でした。医者からは余命半年と言われてたらしいです。

医者や親戚には娘が今大事な時期で、心配するから連絡しないでくれと念を押していたらしいです。

父母私と三人家族で中学の頃、母が交通事故で死に、大変だったのに大学まで行かせてくれた父。

沖縄に行きたいというのは今まで私のためだけに生きてきた父の最初で最後のワガママでした。

叔父から父が病院で最後まで持っていた小学生の頃の自分の絵日記を渡されました。

パラパラとめくると写真が挟んであるページがありました。

絵日記には「今日は沖縄に遊びにきた。海がきれいで雲がきれいですごく楽しい。

ずっと遊んでいたら旅館に帰ってから全身がやけてむちゃくちゃ痛かった。」



・・・というような事が書いてありました。



すっかり忘れていた記憶を思い出す事が出来ました。

私は大きくなったらお金を貯めて父を沖縄に連れていってあげる。というようなことをこの旅行の後、言ったと思います。

父はそれをずっと覚えていたのです。そして挟んである写真には自分を真ん中に砂浜での三人が楽しそうに映っていました。

私は父が電話をしてきた時、どうして父の唯一のワガママを聞いてやれなかったのか。



もう恩返しする事が出来ない・・・

涙がぶわっと溢れてきて止められませんでした。




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